兵庫県姫路市、書写山を望む一角に建つ正方形平面の2階建て木造住宅。

計画地の周囲は全てのどかな田園だが、施主はそれらに対して大きな窓を開くことを特に求めてはいなかった。長い議論の末に出来上がった住居はむしろ、全方位に対して積極的に閉じた格好をしており、中心に立つ空虚なタワー(上部に換気窓を持つ階段室)に対し、巻貝さながらぐるりと居室群が2層分巻き付き、それぞれの独立性を保ったままタワーと接続されている。

内部における白々しい明るさや、外部への安易な開放性等とは無縁の、日常におけるサバイバルを可能とするために作られた小さな家。「外のような内のような」曖昧さはここにはなく、各部屋は強固なシェルターとしてのどかな田園に鎮座する。

家(ここで言う散居)とは、そこに住む者・物を守るためにこそまず第一義に存在する。

 

竣工年 :2016年
場所  :兵庫県姫路市書写
設計  :髙橋功治アトリエ
施工  :株式会社笹原建設
写真撮影:多田ユウコ